PROFILE

Office Miura(三浦事ム所)
三浦 路夫
本日は、名古屋市でブランディングのコンサル会社を経営されていらっしゃる、三浦路夫さんをインタビューしてきました!
三浦さんのご職業は、アートディレクターだとお聞きしました。恥ずかしながら、正直、アートディレクターというお仕事のイメージがちゃんとできていないのですが…
そうですよね。
もともとはグラフィックデザイナーとして活動をしていたのですが、30年以上前に、アートディレクターに転身しました。
例えば、クライアントから「公園の木を切ってください」というオーダーを受けた時に、かっこよくデザインして木を切るのがグラフィックデザイナーの仕事だとしたら、アートディレクターは「なぜ木を切るのでしょうか?」ということを考えるところから入ります。
その結果、「木を切らず、木陰のある公園にしましょうか」という提案をするなど、課題がどこにあるのかを深堀りして明確にしてから、時には視点を変えて同じ課題を解決するのがこの仕事の特徴です。
なるほど。とても分かりやすいです!
グラフィックデザイナーからアートディレクターに転身されたのには何かきっかけがあったんですか?
はい。実は20代で一度会社を立ち上げたのですがが、一度締めたという経験をしています。
当時はデザイナーの仕事で、夜中まで働いて、給料も安かったんですよね。
そこで、フリーで活動しているそれぞれの分野のプロ同士で協業して、一つの課題を解決していくサービスを提供しよう、というやり方に変えたんです。
その中で、「企業の課題を解決するには、『経営戦略』から考えていくことが必要だ」ということがわかってきて。その『経営戦略』を考えるとなった時に、企業のブランディングがものすごく大切であることに気付き、そこからブランディングに取り組むようになりました。
中小企業の課題のほとんどは、お金と人に関することなんです。
ブランディングの目的は、ずばり売り上げを伸ばすことなんですね。マーケティングと違うのは、「お客様のファン化を促す、お客様を育てる」という視点です。
さらに、ブランド構築は、科学的根拠に基づいた8つのステップを踏んできっちりやっていくので、分析の足跡が残るんです。
そうすると、構築した後にも、企業主体でPDCAが回せるようになるんですよね。
この「ブランド戦略」という考え方は、当初は中小企業には全く浸透していなかったし、今でもまだまだ道半ばの段階です。現在はブランドマネージャーとして企業のブランド構築のご支援をしながら、もっとブランディングを広く浸透させるために、今はブランドマネージャー認定協会で、講師の仕事もしています。
ーなるほど。企業さんに対するアプローチだけでなく、ブランディングそのものの啓蒙活動にも携わっていらっしゃるのですね。
その通りです。
啓蒙活動の最たるものがシンポジウムになるのですが、そこでは最優秀賞を始め、賞も何度か獲得しました。
すごいです!実際の事例をお聞きしてもよいですか?
はい。例えば、とある知多木綿の卸問屋の会社さんのお話なのですが…。
会社メンバーがみんな「この会社がなくなっても一般の人は特にだれも困らないよね」というマインドで、3代目の社長がその状況に悩んでいたんです。
その中で、いろいろお聞きしていくと、「自分たちは生地の選別には自信がある」と。
そこで、オリジナルの白シャツを製作して、アンテナショップを作って販売し始めたんです。
そうしたら、3年ぐらいかけて、じわじわ売り上げが上がりましたね。
次に、豊橋の釣具屋さんの事例です。
日本のルアーは制度がとても高く海外で人気なんですが、ここは社内派閥で二つの同じようなブランドができてしまいまして…
そこのすみわけ整備、デザインのし直し、広告展開などに携わりました。
そして、昨年ブランドマネージメントアワードで最優秀賞をいただいたのが、1976年創業のソーセージ屋さんです。
ここは、健全な牛を選別して仕入れるために、一頭買いをしていたり、さらに、無添加にもこだわっていて、とことん良質なものを作ることにコミットしていらっしゃる企業さんで。
ただ、昔からそれまでずっとテレマーケティング中心の販売をされていて、当時の顧客層が高齢化していき、だんだん買わなくなっていっちゃったんですね。
そうすると当然売り上げが落ちるので、それがきっかけでブランディング再生を図った経緯があります。
この企業の課題は、「顧客ターゲットの若返り」でしたので、子育て世代・若年層向けのブランドストーリーを作って、テレマーケティングからデジタルな集客方法にシフトチェンジしました。
お孫さんがSNSにとてもたけている方だったということもあり、Instagramのフォロワーは2万フォロワーから10万フォロワーになり、売り上げは3年間で5000万もアップ。3億を超えました。
ーそれはすごい結果ですね!
ありがとうございます。
一定程度ターゲットチェンジもかないましたが、今後は、子育て世代のお客様をもっと増やしていく取り組みをしていく所存です。
これまでで一番うれしかったことを教えてください。
具体的なエピソードではないのですが、お客様から「やってよかった」と言っていただいた時は、嬉しい気持ちになりますね。
ブランディングって、急務のことではないじゃないですか。少なくとも、顕在ニーズではないんです。
まずは、その企業さんの困りごとをはっきりさせてから、それに対してブランディングが本当に必要かどうかを明らかにしてからスタートするものなので…。
なんとなくいいといわれているから…と言って始めても、成功しないんですよね。
実際、全くブランディングが響かなかった時期もあって、セミナーを開催しても、「いい話を聞いた」で終わることばかりで、その時期はすごく苦しかったです。
今後のビジョンをお聞かせください。
はい。なんといっても普及活動ですね。
ヨーロッパではアイデアもお金に換える文化が当たり前なのですが、日本においては、まだまだそういった無形のものに対して対価を払うという文化が根付いていない。
そういう文化を広めていきたいと思っています。
クリエイターとしての視点では、思ったもの、デザインを形にする力の前に、作るときに最終的な目標を誤ると終わりなので、その本質を見極める力がとても重要だと思っています。
そのためには、経営者さんと同じ視座で話せるように、日々勉強を続けることが大切だと考えていますね。
ーなるほど。何事も大前提は「この先どうなりたいか」「何のためにやるのか」を明確にすることですよね。貴重なお話をありがとうございました!
会社情報
ちなみに、三浦様の奥様は、財務面からの切り口で企業さんをサポートするお仕事をされていらっしゃり、自宅で経営戦略についてお話しされたり、お互いがお互いの壁打ち相手になったりされているそうです。
お互いがお互いをリスペクトしあいながら高めあっていらっしゃる本当に素敵なご夫婦でした。ご協力ありがとうございました!