PROFILE
株式会社AXIONS
黒田 早紀子
本日は、名古屋市内で就労継続支援B型事業所を経営されている、株式会社アクシオンズの黒田 早紀子社長にインタビューしてきました!
まず、こちらの会社をたちあげたきっかけを教えて頂けますか?
小学生のころ、伝記をよく読んでいたんですね。
その中で、「人のためになる事をやることこそが、人の生きる意味なんだ」ということを、常々感じていました。
一方、当時、小学校は一学年1クラス20数名のいじめが激しい学校で…。ある日、障害を持った男の子が転校してきて、案の定、いじめのターゲットになったんです。
そこで私は、いじめっ子に、思い切っていじめる理由を聞いてみたんですね。
そうしたら、「だって、〇〇は先生にひいきされていてずるいから」と…。
「何じゃそら!」と憤りを感じたものの、やはり、クラス替えがない長い小学校生活で、自分がターゲットにされるのが怖くて、その時は何もしてあげられませんでした。
そんな、自分の中での理想と現実のギャップを感じる小学生時代を過ごしたわけなんですけれど、中高と進学する中でも「人のためになることがやりたい」という想いは変わらず、医学の道に進もうと思ったんですよ。
塾には通わず、ひたすら独学で勉強して…。
ただ、理数系は得意だったのですが、文系科目が全く伸びなくて。笑
–想いの強さと行動力がすごすぎて言葉が出ないです…
いえいえ(笑)
でも、そんな時ふと、「ずっと医者になる事ばかり考えていたけど、私、世の中のことを何も知らないな」ということに気づき、いったん医学部ではない学校に行こうと決めました。
そこで改めて「じゃあ、果たして何を学ぼうか?本当に人のためになる事とは?」と真剣に考えたんですね。
そこで考え付いたことが、「人のためになるようなボランティアをしたいと思っても、一人ができることは限られている。本当に人のためになる事をするには、資金・人脈・マネジメント力が必要だ」ということでした。
そして、「それって、会社経営だな」と思ったんです。
そこから、会社を経営することに興味がわき、経済学部に進学することを決めました。
-高校生の段階でそんなことまで考えていたなんて…
はい。その後の就職活動では、いろんな業種のことを知るチャンスだと思い、1年半かけて300〜400社くらいの企業を見ました。
結局その段階では決めきれず、「だったら、いろんな業界を見られる業種にしよう」ということで、コンサルティング会社に就職しました。
そこでは、「仕事のやり方、進め方」を学ばせていただきましたね。
そこでたくさんの業種・ビジネスを見ていく中で、ビジネススキームが確立していて、人の役に立てる「福祉業界」での起業を決め、2019年にコンサル会社を退職して会社を設立し、今に至ります。
–自分の学生時代が恥ずかしくなるような素晴らしいお話で感動しました。
では、御社の商品・サービスについて詳しく教えてください。
いわゆる、就労継続支援B型事業所です。
障害のある方はやはりなかなか就職することが難しいのですが、そういった方に就労の機会を提供するサービスですね。
健常者のスタッフを雇用して、一人一人の仕事の向き不向きや割り振りを考える役割を担ってもらっています。
また、障害をお持ちの方が企業に就職できるような支援プログラムもあります。
–こちら以外にも事業所はあるんですか?
はい、名古屋市内にここを含めて3か所の事業所があります。
2事業所目は2021年、3事業所目は2024年にオープンしたばかりです。
現在、健常者のスタッフさんが23名。利用者さんは100名弱いらっしゃいます。
すごい人数ですね!きっと魅力的な事業所さんだからこそだと思うのですが、ほかのこういった事業所と「こういうところが違うぞ」というアピールポイントはありますか?
「この事業所ではパソコン業務特化、ここの事業所では古着の店舗での販売、あっちの事業所ではネット販売」といったように、事業所の立地に合わせた仕事内容の提供をしているところでしょうか。
あとは、これまでのこういった事業所は、エアコンの利いていない倉庫など、労働環境があまりよくないところが多かったのですが、「きれいなところで働いている」という感覚を持ってもらいたいという気持ちでオフィスを設計したりしています。
立地に関しても、駅に近くて来てもらいやすいところにこだわっています。
–障がい者の方への思いに溢れていますね。
これまで経営していて、一番うれしかったことはなんですか?
利用者さんが、従業員に対して「大好き!あなたがいるからここにきているのよ」「あなたは私の先生です」と言っている姿を見たときですね。
もともと、自分一人が対峙する目の前の人だけでなく、住みやすい社会を作っていきたいという想いで経営者になったので、自分の想いや思い描く姿が組織に浸透しているのを見ると「自分が思い描いていた姿だなぁ」と感じます。
時には、従業員さんが「一緒に働こうよ」と言って別の従業員さんを連れてきてくれることもあり、自分の職場にも自信が付くようになりましたね。
では、一番苦しかったことは?
オープンしてから1年間は従業員さんが同じ方向を向いてくれず苦しかったですね。
それまで、コンサルティング会社で勤務しているときは人間関係で悩んだことってなかったんです。
それが、何気ない一言で思わぬ反応が返ってきたり、退職代行を使って突然やめてしまった人もいて。
一時期は「雇った人が辞めない会社が良い会社だ」という固定概念に縛られて、従業員に対してものすごく気を使っている時期もありましたね。
でも、それってなんか違うなと気づきました。
そのあとは、理不尽なことに対しては毅然とした態度を取れるようになり、思い切って辞めてもらったこともあったのですが、そうしたら、自然とそのあとは「辞めてほしくないな」と思えるような従業員さんに恵まれるようになってきて、事業所を増やすきっかけにもなりました。
では、社長の「これだけは負けない!」というポイントを教えてください。
計画力と行動力でしょうか。
むやみに事業所を増やすことは目的にはしていなくて、従業員が育ったタイミング、資金的な余裕・融資が引きやすいタイミングを見極めて事業を拡大したり、法整備の方向性を読むことも大切にしています。
やると決めた時に行動する力ももちろんですが、その時代に求められた業態に対応できるように情報収集をして事業展開を考えています。
では、最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
利用者さんが増えてきたので、そのマンパワーを活かした製造などのもう一つの柱を作りたいですね。
後は、今は詳しくは話せないのですが、実は特許を取って商品化し、今度の大阪万博に出そうと思っているものがあるんです。
これからの10年間くらいで、そちらの事業を大きくしていきたいと思っています。楽しみにしていてください。笑
ただ、何をやるにしても、根底にある「従業員と一緒に、ハード面だけでなく、ソフト面で住みやすい街、住みやすい社会を作っていきたい」という想いは変わらないですね。