PROFILE

マッドサウニスト合同会社
madsaunist YsK
本日は、外科医としての顔も持ちながら、サウナプロデュース、サウナ機材の製造・販売を行うマッドサウニスト合同会社のmadsaunist YsKさんにインタビューをしてきました!
さっそくですが、普段は外科のお医者様なんですよね!?
はい。大学卒業後、消化器外科医になりました。研修医の頃から、かなり実践的な手術をやらせてもらっていたんですよ。
研修医の最後に、外科医としての登竜門的存在である「エルステマーゲン」を経験しました。
研修医の段階でそこまでいく人って、正直なかなかいなくて。
10年くらいは外科医の世界の中でもトップを走っていたくらい、バリバリやっていましたね。
ただ、外科医の仕事って本当にハードで・・・。
自院での病棟当番と他院での勤務を掛け持ちするのが一般的なんです。
そうなると、当直と日勤の組み合わせや休みを取るタイミングを逸してしまい、7連続日勤+当直で最大58日連勤したこともあります(苦笑)
ーそんなにハードなお仕事なんですね。想像を絶する勤務時間ですね…
気づけば10年ほど、外科医として走り続けていましたね。
大変なことも多かったですが、その経験が社会人としての基礎や、仕事に向き合う姿勢を育ててくれたと思っています。
外科医として多くを学ばせてもらったことには今も感謝していますし、今なお現場で命と向き合う先生方には、本当に頭が下がります。
サウナ事業を始められたきっかけはなんだったのですか?
はい。最初は完全に自分がサウナ好きすぎて、個人的にテントサウナを輸入したところから始まりました。
今から4年ほど前なんですが、当時、日本にはテントサウナが1種類しかなかったんです。
でも、僕はみんなと同じものを買いたくなくて(笑)
自分で調べてロシアから輸入したんですよ。
その時、せっかくだったらほかに買いたい人がいれば・・と思ってSNSで募ったところ、10人くらい集まったんですね。そのうち2人とmadsaunistを結成しました。
あとは、そのテントサウナで使っていたストーブがすごく壊れやすくて。
壊れないギア開発をしたいと思ったんです。
他社製品を輸入してそのまま販売するのではなく、車を輸入してきて色んなオリジナルのパーツも組み合わせて世界に一台の車を作る、そんなイメージですね。
実際、サウナストーンを一つ変えるだけで体感が変わったんですよ。
ほかにも熱源など、サウナを構成する要素一つ一つの組み合わせでまったく体感が変わることを実感したので、そこから「科学的根拠に基づいて新しいサウナ体験自体を創造する集団」になっていった流れです。
ーなるほど。「好き」という気持ちって、仕事をするうえで本当にほかの何よりも大切ですよね
サウナ機材の開発・販売以外にも、イベントや施設プロデュースもされているんですよね?
はい。メンバーの一人がイベント業界で仕事をしていまして。
森の中に風鈴やウッドチャイムを設置したり光の演出をしたり、今までのサウナイベントではなかったようなものをプロデュースしています。
その日の風向きや気温、気圧などコンディションによってセッティングを変えることで、施設よりも気持ちいいサウナを作ろう!というコンセプトですね。
そこから派生して、最近では施設プロデュースも手掛けています。
ーサウナのイベントがあるなんて、初めて知りました。
イベントは正直かなり大変なんですよ(笑)
セッティングしたり撤収したり…時間も労力もかかります。
でも全国を回って、来てくれた人たちに「マッドさんのサウナ、どこで入れるんですか? 感動しました!」と言ってもらえる。それがやっぱり大切なんですよね。
他のサウナとの違いはどんなところにあるんですか?
はい。過熱水蒸気と別の熱源を併用したサウナはうちが初めてで、それによって「アツアツ・うるうる・苦しくない」サウナが実現したんです。
そのスチームジェネレーターは、燕三条の職人さんとmadsaunist全員でこだわってゼロから作りました。形状から、各部のサイズに至るまで、設計段階での検証を重ねた結果試作一回のみで製品ができました。モノづくりでも、サウナ設計でも、机上での計算や試算を繰り返すことで失敗は減らせると思っています。また、機材だけでなくイベントでは、北海道でも沖縄でも、どんな気候帯にも合わせてセッティングをすることをやってきました。
ほかのサウナを手掛けているところとの大きな違いは、科学的根拠に基づいて「日本人が本当に好きなサウナ」を追求しているという点でしょうか。
なるほど。まだ短い期間ではあると思うんですが、これまでで一番うれしかったことはどんなことですか?
うちのサウナに入ったお客さんから
「今までいろんなサウナに入ってきたけど、こんなサウナ体験したことない。過去一!」
と言ってもらえたことですね。
他にも有名なサウナプロデュース会社はたくさんありますが、うちにプロデュースを依頼してくれるところは、うちのサウナに入って、直接話して、そのうえで「お願いしたい」と言ってくれるところがほとんどです。
昨年、サウナオブザイヤーを受賞させていただいたのですが、そのときに、受賞したことを心の底から喜んでくれる人たちがたくさんいたことは、とても嬉しかったです。
これからのビジョンとしてはどんなことを考えていらっしゃいますか?
当面は外科医との二足のわらじを続ける予定です。
サウナって生活の中にあるものだと思うので、社会のいろんな場所に普及させて生活の一部になることを目指したい。
最終的には「サウナ付きのクリニック」を作りたいと思っています。
最近、サウナでの呼吸法レクチャープログラムを始めたんですよ。
サウナ自体の質だけではなく、自分の行動次第でサウナの体験価値をもっと向上させることができるんです。その一つがブレスワーク、呼吸法ですね。
今は施設を貸し切って、1時間ほどのレクチャーのあとにサウナに入るという約3時間のプログラムを開催しています。非常に好評なので、今後もっと全国に広めていきたいです。
ー「好き」が高じてこんなところまで極めるなんて、本当に感服します。
特許を取ることなどは考えていらっしゃらないのですか?
そうですね。機材があればそれだけで完成するわけではなく、最終的には僕たちのセンスや肌感が関わってくるので、特許とは親和性がないかなと思っています。
機材だけでなく、それをセッティングして初めて「完成形」になるので・・。
その部分も含めて、われわれのやり方をリスペクトしてくれて、思想を広めてくれる人たちと高め合っていきたいという気持ちがあります。
このインタビューを受けている SHIFUKUの船屋くんもその一人ですね。
(株式会社しふくのとき)
ーなるほど。今度、プロデュースされたサウナがオープンするんですよね?(インタビュー時期は2025年9月末)
はい。10月に鎌倉に 御成桑拿(オナリサウナ) というサウナ施設ができます。
(https://onari-sauna.com/)
全体設計や内装は、有名な建築家・谷尻誠さんなんですよ。2種類の蒸気によって一つのサウナ室内で異なる体感を造り、それらが中央で混ざり合う仕組みを導入しています。ぜひ足を運んでみてください。