PROFILE

税理士法人 耕夢
塩尻 明夫
工学部出身から公認会計士へと、ちょっと意外なキャリアを歩んできた塩尻さん。大手監査法人を経て、現在は税理士法人 耕夢の代表としてチームを率いています。
今回は、そんな塩尻さんに、これまでの歩みと仕事への想い、そしてこれからのことをお聞きしました。
これまでの経歴を教えてください
大学では工学部で材料力学を研究しており、大学で研究をする一方で、大学院在学中に会計の専門学校に通い、公認会計士試験に合格しました。
会計士となってからは、大手の監査法人に5年ほど勤務しました。監査法人の監査ソフト開発のため、アメリカの開発専門事務所に1年半の予定で派遣されました。
しかし、アメリカの事務所派遣中に、会計事務所をしていた父親が大病を患いまして、戻ってきて会計事務所を継いでほしいと。
当時は税務をやるつもりは全くありませんでしたが、本能的にここは戻るべきだと思い、急遽帰国して父親の会計事務所を承継し、以後、事務所の代表となり、現在に至ります。
ー会計士を目指したきっかけはありましたか?
親が税務系の仕事をしていたため会計士という資格は知っていましたが、会計士の資格も持っておいた方が良いかなという程度でした。
専門学校で簿記をイチから学習し、その後1年間本格的に勉強して合格しました。
会計事務所を引き継いだ時のお話を聞かせてください
事務所の創業は昭和38年頃で、私が事務所を引き継いだのは平成9年です。
承継直後は大変でした。顧客2名が若さや引き継ぎ直後であること、相続・税務署対応への懸念などの不安から離れていきましたが、他のクライアントは概ねスムーズに引き継ぐことが出来ました。
振り返ると、大手事務所では半数程度の顧客が離脱する例もあると聞いていたので、まだ良かったのかなとは思います。
今では、本当に良いお客様に恵まれ、とても感謝しています。
会計士は、税理士資格もあるので法的には業務が出来ますが、すぐに実務が出来るかといったら全然出来ない。税務も改めてそこから集中的に勉強しました。
現在も当時のスタッフが在籍してくれていますが、スタッフのサポートがあったからこそなんとかやっていけたのではないかと思います。
事務所の事業内容や強みについて教えてください
現在の拠点は、大阪市中央区、堺市、岐阜県の3拠点です。
事業内容としては、一般的な会計・税務に加え、事業承継・相続対策を得意としています。
業種はメーカー、サービス、衣料、ソフトウェア等、医療など様々ですが、加えて、裁判所業務、弁護士連携(倒産、民事再生、調停員、株価算定、係争系、弁護士の特許関連業務)、医業経営コンサル業務など行っています。
強みとしては、先ほどお伝えした通り様々な業種に対応できる点もですが、もうひとつ、スタッフに関しての強みがあります。
弊社のスタッフは、ほぼ全員、未経験者の方が入社されます。簿記保持者が前提ではありますが、最短3ヶ月で決算が組めるよう育成プログラムを用意しています。他に、スタッフ同士で教え合える仕組みがあり、その支援実績に関する評価制度もあります。
独自のシステム・マニュアルを活用しておりますが、離職率はかなり低いです。
スタッフさんが安心・安定して働ける環境作りも常に意識しています。

ースタッフの採用で工夫している点や採用プロセスはありますか?
はい。まずはA4用紙1枚の筆記テストを実施し、点数の高い順に採用しています。
テストは、人柄や能力が表れるようバランスよく設計されており、倫理要素や、質疑応答で適切な返答ができれば加点される仕組みも導入し、これにより良質な採用実績が継続出来ています。
テストの点順での採用、入社後のプロジェクトへの貢献度を正当に評価する一貫した制度設計が成果に表れています。
仕事をしていて嬉しい瞬間はありますか?
本音をいうと実はあまり無いです。というより無いようにしています。
「出来て当たり前」というスタンスで平坦に淡々と集中し、1年が自然に終わる運営で、かつ「生産性超絶高い」状態を維持するようにしています。
自身の感情の起伏も極力出さず、前年比がどうとかも比べない。
一か月、一年を淡々とこなす。あえて言うならば、それがきちんと終わった時に嬉しさを感じますね。
日頃心掛けていることはありますか?
自分は向かい風を好むタイプなので、大変さにやりがいを感じますね。追い風で楽な状況だと逆に不安を感じるほどです。
困難な時もそうでないときも、当たり前に淡々と仕事を進めていく。残業をたくさんせずとも成果を出し、スタッフの給与も淡々と上がっていく。
働き方と感情をフラットに保ち、頑張っている感覚なく成果を出すことを心掛けています。
残業がほとんど無いと伺いましたが、どのような工夫をされていますか?
大阪の拠点では20年間残業が一切ありません。なので、残業を計算する仕組み自体がこの拠点にはありません。残業代を出さないのではなく、時間管理を徹底し、残業代ではなく昇給で報いる方向にしています。
最近では、16時半に仕事を終えても昨年よりも大きな成果を出しています。
引き継いだ堺の拠点では当初深夜23時頃まで残業がありましたが、人員配分の最適化により現在は18時頃には退社、相当遅くなったとしても21時程度です。
残業がゼロでも評価は適正に行い、給与は上がっていく仕組みを構築しています。
法人名の「耕夢(こうむ)」の由来を教えてください
法人名の「耕夢」は、クラウドワークスに依頼し、我々のデザインコンセプトに合致する名前、紹介文言、アイコンなど募集して、最優秀案を採用させていただきました。
個人事務所時代からのそろばんをモチーフにした事務所のロゴと統一感のあるセットデザインとし、ホームページの画像、動画、音楽に至るまで一貫したコンセプトにしています。
私達の仕事は、どこか大地を耕すここと似ています。
毎日同じように朝早く起きて、畑を耕し、作ったものを食べ、日没とともに家に帰って休むという「夢を耕す」という思いを込め、また、その大切なひとつひとつの作業を丁寧に行い、愛情をもって進めるために「業務」ではなく「耕夢」と呼ぶことにしました。
ー「夢を耕す」ですか、とても素敵なお名前ですね。
公認不正検査士の資格について詳しく教えてください
米国に本部を置く「公認不正検査協会」が認定する資格で、不正の防止・発見・抑止に関する専門知識と技能を持つ不正対策の国際専門資格です。
会計の知識だけでなく、法律知識や犯罪心理学、調査手法の専門知識を必要とし、企業における不正リスクを分析し、不正の未然防止・早期発見・調査対応を実施する専門家です。
会計士は従来、不正への知識・時間が不足し、また性善説に立つため対人面でも無垢で対応困難という認識でしたが、私はこの資格が米国から日本に入り始めた頃に資格を取得し、研究を推進しています。アメリカの数千人規模の公認不正検査士の国際カンファレンスにも複数回参加し、現在は、日本公認不正検査士協会の理事も務めています。

10年後のビジョンはありますか?
10年後には引退を見据えています。
仕事はやめるつもりはありませんが、第一線から身を引きたいと考えています。
それまでには組織の基盤を整え、皆がこの仕組みを使って成長し、代替性のある有能な人材がトップに立ち、組織が淡々と成長する体制を目指しています。
法人化は引退のための基盤整備でもあります。
会社情報
税理士法人 耕夢
https://koum.jp/
インタビューを通じて
塩尻さんの多様な経験や独自の視点を深く理解することができ、大変興味深く感じました。
特に、キャリアの転職や事務所の運営の工夫について、詳しく聞けたことが印象的でした。
今回のインタビューでは、多くの学びを得ることができ、とても有意義な時間となりました。
塩尻さんの今後のご活躍をお祈りしています。